Ginseisha,Japanの活動

これまでの取り組み

Ginseisha,Japanは、近代建築の有効活用と関西の文化芸術に深く関わってきました。

南海摩登(もだん)博覧会 2008年秋に、旧西本組本社ビル(和歌山市)において、日仏交流150周年記念事業として、このビルが建てられた大正・昭和時代初期の文化を再現した催し・南海摩登博覧会を1ヶ月にわたり開催しました。週替わりで大学博物館やマルク=シャガールの展示を行ったほか、会期中には建造物が建てられた昭和初期をイメージさせる多数のイベントも同時に行いました。この取組みで得られたノウハウは、2010年以降各地で開催されるアートイベントの企画運営に培われました。(2008年文化庁「NPO等による文化財建造物活用モデル事業」)

大阪市・中之島4117企画委員 わたくしどもは2011年度に大阪市が出資する「中之島4117」の企画委員に就任し、「アートのつなぎ手講座」を開催しました。このときに計画養成した「コーディネーター(アートのつなぎ手)」を近畿地区で開催されるさまざまなアートプロジェクトに派遣しました(2012年度2名・2013年度1名・2014年度1名・2015年1名)。

AIR(平成都久夫須麻プロジェクト) 2012年より芸術・映像アーカイブ収集の観点から近畿地方の航空写真を撮影する非営利のプロジェクト「AIR」を実施しました。撮影した航空写真は、近畿地方の文化財建造物において展示・公開や、各地における芸術祭での出展、地域の新聞・コミュニティ雑等に対する連載記事の提供、企業とのコラボレーションによるさまざまなプロダクトの制作を行いました。(2013年滋賀県「「美の滋賀」地域づくりモデル事業」及び文化庁「地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ」、2014年国際芸術祭「BIWAKOビエンナーレ」他)

キュレーションユニット・サラスヴァティ 2013年秋に、旧川本邸・源九郎稲荷神社(大和郡山市)において、奈良 町家の芸術祭 HANARARTのキュレーターとして、企画展示「回游城市 – swinging journey」を企画しました。なお、企画内容は図録「回游城市 – swinging journey」をご参照ください。(2013年奈良県「奈良・町家の芸術祭HANARARTにおける地域活性化事業」)

現代スペイン陶芸と日本の交流芸術祭-ミシオン・セラミカ 2015年夏に、和歌山県紀美野町・和歌山市・大阪府堺市において、現代スペイン陶芸と日本の交流芸術祭-ミシオン・セラミカを開催しました。(2015年和歌山県「地域・ひと・まちづくり事業」)

近代建築プロデュース Ginseisha,Japanでは、2004年の団体設立当初より、地方都市における近代建築の持続的な有効活用の方法を模索しながら、さまざまな活動を展開しています。

旧西本組本社ビル(和歌山市)に関するテキスト by 北夙川不可止(2005年11月) 

和歌山市の中心部、南海電鉄和歌山駅から徒歩十分かからないという便利な立地ながら閑静な住宅地の一角にある旧西本組本社ビル(西本ビル)は、歴史ある城下町ながら戦災によって明治維新から昭和戦前期にかけての歴史的建築物が殆ど現存しない県都和歌山市にあって、極めて数少ない民間所有の近代洋風建築である。幸いによき所有者により大切に維持管理されており、国の登録有形文化財第30-0042 号となっている。
施主は西本組。慶應年間創業の名門であり、かつては三井財閥とも関係を結び、多くの鉄道建設を手がけるなどわが国でも屈指の大手土木建設業者であった会社である。このビルは大正年間、その本社として建てられた。設計者は西本家の縁戚であった岩井信一、当時早稲田大学を卒業したばかりの俊英建築家で、このビルはその卒業作品として設計されたものという逸話が西本家に伝わっている。今のところ未調査だが、岩井は恐らくその後、西本組の技師として活躍したものと思われる。
また、ビル建設時に同時に西本組のトレードマークも公募され、漫画家の小佐野佐世男の案が採用されたとのこと。現在の西本組の商標がそれである。
建築的には、当時のオフィスビルとしてはオーソドックスであったネオ・ルネサンス様式を採用しているが、石積や煉瓦積ではなく近代的な鉄筋コンクリート造となっている。三階建てであるが、現代の建物と比すると階高が大きく贅沢に作られているので、広々とした内部空間を持つ。正面には威風堂々たる玄関があり、上部には大きなペディメント(破風)がかけられ、それを優美なイオニア式柱頭を持つ石柱が支えている。特筆するべきはこの石柱で、継ぎ目がない一本の石材からなっているのだ。大変豪奢なつくりといえる。
外装は一階部分が西洋建築の基壇(ベースメント)に当るので、御影石の化粧張りが施されている。それに対して二階から上は茶色いスクラッチタイル張りで、当時のモダンな雰囲気を今に伝える。窓は時代がかった縦長の上げ下げ窓で、当時の木製サッシもほぼ現存しているが、残念ながらガラスの多くは新しいものに代えられており、一部には透明プラスチック板も見られる。これは今後、ガラスへの填め替えが望まれる。また、実見したところでは、内部空間は相当の改変が加わっているようで、この時代のビルにつきものの天井の石膏装飾が見られないのは惜しまれる。戦災によるものだろうか?
また、来歴不明であるが、ビルの側面には煉瓦造の高い塀が一部現存している。防火壁かと思われる。

活動を止めるな! - COVID19(新型コロナウイルス感染症)への対応

2020年1月中旬より世界を猖獗した新型コロナウイルス感染症は、わたくしたちの行動様式を一変させました。まちなかから途端に外国人観光客の姿が消え、近所では感染者が出たという噂が立っておそろしい騒ぎになりました。マスクは品薄、気がつけば学校は休校となり、その後緊急事態宣言の発令により多くの人が自宅にこもりきりとなってしまいました。

わたくしたちの活動もオンラインによる活動が中心となりました。その間、わたくしどもは「100年前の台湾」をテーマにしたオンライン学習会を継続開催するとともに、新型コロナウイルスに起因する貧困問題に取り組みを進め、2020年度・2022年度には、多くの皆様の協力をもとに、弊団体が獲得した外部資金を活用し、収入が激変したアーティスト・クリエイター等を対象に、弊団体が受託している事業の一部を協働いただくワークシェアリング事業「annus mirabilis」を実施しました。

Ginseisha,Japanからのメッセージ

Ginseisha,Japanでは、関西地区を中心に、2004年の結成当初より近代建築の有効活用をはじめ、さまざまなアートプロジェクトの技術支援といった活動に携わって参りました。それぞれの取り組みに対してはここには書き尽くせないほどの思い入れがあり、おおまかな活動については活動ブログ(画面左上の「blog」より参照できます)にも掲載しています。二十年近く取り組んできて改めて実感したことは、「言うは易し、行うは難し」というひとことに尽きることです。NPOにありがちな補助金依存体質からの脱却をいち早く進めましたが、近年の新型コロナウイルス感染症では、対外的な活動がほぼ封じられてしまったことが痛手となりました。小規模団体としての特性を活かし、オンラインでの活動に軸足を置いている状況ですが、こういった傾向も2023年には新しい兆しが生まれつつあります。

2024年9月にGinseisha,Japanは創立20周年を迎えます。いまなお、当初のミッションであった近代建築の活用に関するご相談や仲介等を引き続き承っております。改めまして、よろしくお願いいたします。(代表世話人)